打率4割は「快挙」か「失格」か? 経産省リポートが浮き彫りにした、交通の「生き残る地域」と「消えた構想」の境界
国と経産省が進めたスマートモビリティ事業は7年で終了。73地域のうち実装は約4割にとどまり、移動サービスの収益性と制度設計の難しさを浮き彫りにした。成功と撤退が混在する実証の実像とは何か。
失敗を資産に変える敗戦の記録

経済産業省が世に出した「事務局分析の成果(参考資料)」。全49ページに及ぶこの報告書をひも解くと、成功例と同じ熱量で、道半ばで中止に追い込まれた事業の細かな記録が並んでいる。なかでも17ページに記されたMaaSアプリの事例は、事業の成否をわかつ境目を雄弁に物語っている。
この地域で行われた実証実験は、結局サービスが根付かずに幕を閉じた。つまずきの背景にあったのは、アプリを使った人と使わなかった住民との間に横たわる
「期待値の差」
だ。住民が求めるサービスが足りず、利用者の広がりを欠いたことで、本来集めるべきデータも十分に守ることができなかった。期待をどう掴み応えるか、その一点を突破できなかった。
ここで目を向けるべきは、失敗に至る足跡が詳細に残されたことだろう。データが集まらなかった事実そのものが、これからの計画を練る上では欠かせない知見となる。成功事例と見比べることで、どの段階で差が開いたのかをあぶり出せるようまとめられている。
本来、民間が自前で挑んで敗れた記録は表には出てこない。国が費用を負担して実証を行い、その内実を包み隠さず公開した。それは、後に続く者たちが同じ轍を踏むことを防ぎ、無駄のない投資を行うための土台を築いたともいえる。
一自治体の手に負える分析ではない。国がこうした知見を泥臭く積み上げたことにこそ、この事業の本当の価値が宿っているのだ。