岸田内閣がコロナ政策を転換 鉄道・バス事業者はV字回復なるか? 参院選の道具となった「ワクワク割」の行方とは
地方の鉄道路線に必要なインバウンド需要

6月1日から切り替えられる緩和制限は、政府が感染拡大傾向やワクチン接種状況・有効性、リスクなどを指標にして、それぞれの国・各地域を青・黄・赤の三つにグループ分けする。そして、青判定された低リスクの国・地域からの入国者は、ワクチン接種の有無とは関係なく入国時の検査や自宅待機を不要にするというもの。
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また、感染拡大が落ち着く傾向を見せているアメリカ・オーストラリア・タイ・シンガポールの4か国は少人数の団体旅行を再開させる。入国者数の制限緩和や団体旅行の受け入れ再開は、岸田内閣が経済活動の維持や生活環境を保つための措置と位置付けている。
コロナ前は訪日外国人観光客の目標を年間4000万人にしており、外国人観光客による“爆買い”は社会現象・トレンドにもなった。言うまでもなく、入国者の制限緩和は外国人観光客が増加することに伴って、増えるインバウンド需要を期待してのものだ。旅行業界・航空業界からも、入国者数の制限緩和は陳情されてきた。
インバウンド需要の回復は、国内の鉄道事業者にも経済的な恩恵がある。昨今、コロナ禍によって、地方の鉄道路線は存廃議論が高まっているからだ。
2022年4月11日、JR西日本が2017年から2019年までの3年間における17路線30区間の収支・営業係数を初めて公表して大きな話題になった。営業係数とは、100円を稼ぐための経費を数値化したもので、JR西日本は芸備線の備後落合駅~東城駅間の営業係数を2万5416と算出。つまり、備後落合駅~東城駅間では100円を稼ぐのに2万5416円の経費が投じられていることになる。
芸備線は広島市への通勤・通学路線として利用されているが、備後落合駅~東城駅は山間部に位置する。そのため、利用者はかなり少ない。これはコロナ前の数字で、コロナによる外国人観光客の利用が減少したことは反映されていない。
つまり、以前から苦しし収支だった路線が表出した形だ。それが前代未聞とも言うべき営業係数の発表になって話題を呼ぶことになったが、外国人観光客の受け入れを再開させれば地方の赤字路線維持にも希望が出てくるかもしれない。
例えば、普段なら利用者の少ない閑散路線に観光列車を走らせるといった具合に、それまでとは違った需要を創出できる。仮に観光列車の運行で収益を出すことはできなくても、観光列車の運行や観光客が沿線を訪れてくれるといった効果によって沿線自治体は活性化する。鉄路の維持という大義名分にもなってくるだろう。
コロナ前の2019年度は、インバウンド消費が年間4.8兆円もあった。2018年には、国土交通省がインバウンドによる地方への経済効果を期待して鉄道による地方への誘客を議論するほど、鉄道路線は地方経済に寄与すると期待されていたのだ。