「これならローカル線を維持できる」 JRが選んだ“昭和の風景”――20駅で止まったIC網を広げる現実解とは

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JRグループが2027年春に導入する「みせるモバイル定期券」は、ICエリアの壁を越える一手である。50台未満のバス導入でも8500万円かかる設備負担を回避し、画面提示という簡易手法で地方路線をつなぐ。デジタル化の常識を問い直すこの仕組みは、交通インフラの持続性を左右する転換点となる。

インフラ投資負担と構造的制約

50台に満たないバスへの交通系ICカード導入も、8500万円もの費用が発生する(画像:国土交通省)
50台に満たないバスへの交通系ICカード導入も、8500万円もの費用が発生する(画像:国土交通省)

 交通系ICカードを広めるためには、対応する改札機といった専用設備が欠かせない。しかし、その存在が経営の重荷になる事実は、10年以上も前から指摘され続けてきた。

 2015(平成27)年にまとめられた国土交通省の資料によれば、50台に満たないバスへの導入だけで8500万円もの費用がかかった事例がある。鉄道会社が背負う負担もこれと同じだ。駅に読み取り機を置き、それを維持し続けるには、どうしても億単位の資金が必要になる。

 今回の新しい定期券は、そうした巨額の投資を避け、収支の悪化を抑えながらサービスを守るための現実的な手だてとなる。物理的な機械への依存を減らすことができれば、コストを理由にIC化を諦めていた路線であっても、広域のネットワークに加わる道が開ける。インフラを保つための負担を軽くすることは、路線の存続を確かなものにするうえで、欠かせない要素といえるだろう。

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