「これならローカル線を維持できる」 JRが選んだ“昭和の風景”――20駅で止まったIC網を広げる現実解とは
JRグループが2027年春に導入する「みせるモバイル定期券」は、ICエリアの壁を越える一手である。50台未満のバス導入でも8500万円かかる設備負担を回避し、画面提示という簡易手法で地方路線をつなぐ。デジタル化の常識を問い直すこの仕組みは、交通インフラの持続性を左右する転換点となる。
地方鉄道における低コスト代替モデル

JR四国が展開する「しこくスマートえきちゃん」は、改札機へのタッチではなく、QRコードの読み取りや画面提示を基本としている。管内の多くの駅が交通系ICカードに対応できていない現状を考えれば、必然の判断だろう。
すべての駅をICカードに対応させるには、気の遠くなるような投資が欠かせない。2026年4月の読売新聞の報道によれば、徳島駅には9月までに4基の自動改札機が置かれるが、維持費の重さから交通系ICカードは見送られるという。現在、ICカードを利用できるのは香川県内の20駅にとどまっており、膨大な運用コストが普及の壁となっている。
こうした状況は私鉄に限った話ではなく、JRグループ全体が抱える共通の悩みだ。画面を見せるモバイル定期券という仕組みは、巨額の設備投資を回避しながら、都市と地方を滞りなく結ぶための血の通った回答といえる。運営側がインフラの維持コストを抑える道に舵を切ったことは、地方路線の命脈を保つうえで大きな意味を持つはずだ。