逆転への執行猶予は3年? 欧州の自動車産業、巨額罰金回避でも残る“制度頼みの限界”とは
EUのCO2規制で2025年に15%削減目標を迫られる欧州自動車産業。BEV比率14%未満の低迷と最大160億ユーロ罰金リスクの中、規制は3年平均評価へ修正されたが、構造課題は残る。揺れる電動化移行局面
規制対応の遅れと市場実態

2025年、欧州の自動車メーカーは厳しい局面に立たされている。欧州連合(EU)の二酸化炭素(CO2)排出規制により、2025年までに2021年比で15%の削減が求められたためだ。欧州自動車工業会(ACEA)の試算では、目標を達成できなければ業界全体で最大160億ユーロ規模の罰金が発生する恐れがあった。しかし、実際の市場動向は規制の想定通りには進んでいない。2024年時点のバッテリー式電気自動車(BEV)シェアは14%未満にとどまり、数年前に予測された25~30%には遠く及ばない。充電インフラの不足や利便性への懸念、維持費の重さが響き、消費者の買い控えが続いている。
こうした事態を受け、EUは2025年4月に規制の見直し案を提示した。欧州議会が5月8日、欧州理事会が5月27日にそれぞれ採択し、2025年から2027年までの3年間の平均値で目標達成を判断する仕組みへ移行した。これにより当面の罰金支払いは回避されたが、目標とする削減水準自体は維持されている。メーカーにとっては負担軽減とは言い難く、販売価格の引き下げや収益悪化にともなう損失を長期にわたって抱え続ける状況を意味している。
販売目標維持に向けた値引き競争は、BEVの中古車価格を大幅に押し下げた。新車価格から3~5割低い水準で流通する中古車が増加し、買い替えを阻む要因となっている。価格の下落はメーカーの金融部門における評価損の拡大を招き、財務を圧迫する。欧州市場で大きな比重を占める法人需要においても、将来の残存価値が見通しにくいBEVの導入判断は難しく、普及に向けた足かせとなっている。