逆転への執行猶予は3年? 欧州の自動車産業、巨額罰金回避でも残る“制度頼みの限界”とは
EUのCO2規制で2025年に15%削減目標を迫られる欧州自動車産業。BEV比率14%未満の低迷と最大160億ユーロ罰金リスクの中、規制は3年平均評価へ修正されたが、構造課題は残る。揺れる電動化移行局面
中国の供給網優位

欧州メーカーは、安価なEVを武器とする中国勢との競争に直面している。中国は材料調達から組み立てまでを一貫して手がける供給網に加え、低い材料費や効率的な生産拠点を背景に、LFP電池の生産で圧倒的な優位を築いてきた。欧州勢が電動化を推進するには、基幹部品や材料の多くを中国のサプライチェーンに依存せざるを得ない。競合相手から供給を受けつつ市場で争う構造となっている。
中国側はこうした優位をさらに強める構えだ。2025年以降、LFP正極材や電池生産に関連する設備の輸出を制限する案を提示している。技術と資源の両面で主導権を堅持する姿勢を鮮明にしており、中国依存を低減させようとする欧米の動きを牽制する狙いがある。欧州勢が調達先の多角化を模索しても、代替となる供給網の構築には数年単位の時間が必要となる。
この格差はメーカーの能力差というより、事業環境の前提条件の違いに起因する。中国勢が電池の川上から川下までを垂直統合モデルで完結させているのに対し、欧州勢は内燃機関車の時代から続く大規模な工場設備や雇用を維持しながら、電動化への転換を進めなければならない。
意思決定の速さやコスト削減の余地で差が生じやすい背景がある。電力コスト、資源調達、製造費用といったあらゆる面で、欧州と中国の間には構造的な隔たりが存在しているのだ。