逆転への執行猶予は3年? 欧州の自動車産業、巨額罰金回避でも残る“制度頼みの限界”とは
EUのCO2規制で2025年に15%削減目標を迫られる欧州自動車産業。BEV比率14%未満の低迷と最大160億ユーロ罰金リスクの中、規制は3年平均評価へ修正されたが、構造課題は残る。揺れる電動化移行局面
エネルギー費の重さ

規制を緩和しても解消されない構造的な課題が残る。
欧州の産業用電力価格は2025年時点でも米国の2倍を超え、中国やインドと比較しても約5割高い水準で推移している。製造コストに直結する電力価格の格差は、電力を大量に消費する自動車生産において、一時的な効率化では補いきれない重い負担だ。さらに、資源供給を特定の国に依存する構造も看過できない。電動化が進むほど、電池材料の調達で中国への依存が強まる構図が鮮明になっている。
国際エネルギー機関(IEA)の分析によると、リン酸鉄リチウム(LFP)電池の本体および正極材の98%以上が中国製だ。硫酸マンガンでも中国のシェアは95%に達する。欧州メーカーが電動車の生産を拡大することは、電池供給の大部分を中国に委ねることを意味している。かつてロシア産天然ガスへの依存脱却を模索した欧州が、現在は電池材料で中国への依存を深める形となっている。
電力コストの格差と資源供給の偏りは、規制の枠組みを変更しても解消されない。欧州の産業界は、構造的な不利を抱えたまま競争を強いられている。生産基盤の整備が追いつかない中で、数値目標のみが先行する危うさが浮き彫りになっている。