万博EVバス「民事再生」の激震――190台はなぜ“バスの墓場”へ消えたのか? 57億円負債と公共調達の死角

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万博で導入されたEVバス190台が、わずか数か月で運用停止に追い込まれた。約80億円の投資と40億円超の公金は回収問題へ発展し、不具合率35%という異例の事態も発覚。輸入依存の実態と検証不足が露呈し、公共調達の前提が厳しく問われている。

国産表示と実態の乖離が招いた混乱

 実務上の遂行能力や責任を欠いた事業者が国産という看板を掲げ、導入を主導した――これが今回の混迷の本質である。当該事業者は2023年に北九州市内へ拠点を設け、国内での組み立てを順次進めるとしていたが、現時点でも自社での製造実績は確認されていない。実態がともなわないまま名前が先行し、公金投入に際しての適格性審査が形骸化していた疑いは拭えない。

 事態の深刻さは、2026年4月14日に開催された大阪市議会と大阪メトロによる意見交換会でさらに浮き彫りとなった。会合の冒頭、大阪メトロの河合英明社長は「EVバスについて、議会の皆様はじめ市民、お客様、関係者に多大なるご心配とご迷惑をおかけしていること、心よりお詫びする」と深く頭を下げ、陳謝した(『関西テレビ』2026年4月14日付け)。

 大阪メトロ側の説明によれば、2026年1月から開始した特別点検において、試験走行中に重大な不具合が発生しただけでなく、車両の分析から「潜在的欠陥」が判明したという。多額の費用を投じてもこれらの欠陥を解消する見通しが立たず、公共交通としての安全性と長期的な安定性を確保することは不可能との判断に至った。

 これを受け、大阪メトロはEVMJ社に対し、契約解除にともなう購入代金の返還、違約金の請求、および車両の引き取りを求めている。現時点で同社からの回答はないというが、大阪メトロ側は「回答いかんによっては提訴提起することも必要だと考えている」と、法的措置も辞さない強い姿勢を打ち出した。

 しかし、事態は最悪の局面を迎える。大阪メトロが強硬姿勢を示したまさに同日、EVモーターズ・ジャパンは東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、受理されたと発表したのである。負債総額は約57億円。相次ぐ不具合による信用失墜と、大阪メトロからの巨額の返還請求に耐えかね、経営が事実上破綻した形だ(『西日本新聞』2026年4月14日付け)。これにより、大阪メトロが目指す購入代金の全額回収は、極めて困難な道筋を辿ることになった。

 今回の事態は、脱炭素という政策目標の完遂を急ぐあまり、車両を長期運用するための保守体制や部品供給の持続性評価が後回しにされた帰結といえる。資産として機能し得ない車両に公金が費やされた事実は消えず、今後、再生手続きの中でどこまで責任が追及されるのか。経営責任の所在を巡る議論は、さらなる泥沼化が予想される。

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