「客はいる、仕事もある。でも会社が潰れる」――「タクシー廃業」が急増、102社退出を招いた“需要と利益の断絶”とは

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帝国データバンク調査で2025年度のタクシー退出は102社(休廃業66・倒産36)と過去最大。需要増の一方、増益33.4%にとどまり6割超が悪化し、採算悪化が鮮明になった。構造的な収益悪化が進む局面だ。

複数要因の重なりと市場退出

タクシー業界 深刻な市場退出 現状。
タクシー業界 深刻な市場退出 現状。

 今回の102社に及ぶ市場退出は、制度の硬直性やデジタル化にともなう重い負担、そして働き手の流動化といった幾重ものひずみが一気に噴出した結果と見るべきだろう。

 ドライバーは少しでも実入りの良い看板を求め、事業者は背に腹は代えられぬ思いで待遇を引き上げる。利用者はスマホひとつで呼べる利便性に流れていく。それぞれの立場からすれば至極真っ当で合理的な選択だ。しかし、その

「個々の正しさが積み重なった果て」

に待ち受けていたのは、地域の足を細々と支えてきた中小の供給体制が、音を立てて崩れるという皮肉な事態だった。ひとりひとりの判断は間違っていないはずなのに、全体としては立ち行かなくなる。そんな合成の誤謬ともいえる景色が広がっている。

 誤解してはならないのは、市場そのものが死に体になったわけではないということだ。収益を生み出す力は、なおこの業界に眠っている。ただ、その果実を手にするためのハードルが、かつてないほどに跳ね上がったのだ。

 コストの膨らみ方が以前のような緩やかなものではなく、ある一点を超えた瞬間に急激に重くのしかかる。配車アプリなどの新しい仕組みを使いこなし、この荒波を受け止められるだけの規模を持てる者だけが、辛うじて生き残りの切符を手にできる。今回の退出劇は、激しい摩擦をともないながら

「業界の形そのものが無理やり作り変えられていく」

過程だ。この現実を直視することは、もはやこれまでのやり方が通用しない領域に足を踏み入れていることを認める作業でもある。100社超の退場という数字は、かつての常識がすでに過去のものとなったことを雄弁に物語っているのだ。

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