「客はいる、仕事もある。でも会社が潰れる」――「タクシー廃業」が急増、102社退出を招いた“需要と利益の断絶”とは
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稼働率低下と車両遊休化

2024年度のタクシー業界をめぐる稼働率の低下という現実は、タクシーが余っているということではなく、むしろ、車という物的な資産と、それを動かすドライバーという人間との間に、埋めがたい「食い違い」が生じていることを示している。
ドライバー不足はもはや一時的な人手不足の域を超えた。車両はそこにあるのに動かせない。つまり、箱は揃っていても中身がともなわないために、「宝の持ち腐れ」となっている状態だ。
車庫で眠ったままの車両は、一円の稼ぎも生み出さない。それどころか、減価償却費や保険料といった支出だけを容赦なく食いつぶしていく。利益を生むはずの道具が、いつの間にか費用を垂れ流し続けるお荷物へと様変わりしてしまったのだ。
そのしわ寄せは、深夜帯や観光地での高単価な需要を、みすみす逃すという形であらわれる。客はいる、車もある。しかし動かせる人間がいないために、売上へと結びつかないもどかしい景色が広がっている。
現場では、人手が減れば減るほど、残されたドライバーへの負荷が重くなるという悪循環も始まっている。それがさらなる離職を呼び、現場をさらに疲弊させていく。こうなると、運賃を少し動かしたり、見せかけのサービスを整えたりする程度では、事態は好転しない。供給の仕組みそのものが機能不全に陥っており、いくら目の前に需要が積み上がっても、それを受け止める器がひび割れてしまっているのだ。
かつては、車を走らせれば走らせるほど、比例して収入が積み上がる
「素直な商売」
だった。しかし、今はその見通しが恐ろしく立てにくい。高止まりを続ける燃料費に加え、キャッシュレス決済の手数料、さらには人手を奪い合うための採用費が重くのしかかる。売上を伸ばそうとアクセルを踏むほど、それを上回る速度で費用が膨らんでいく。稼働を上げることが、かえって自らの首を絞めることになりかねない。
特に、体力の乏しい小規模な事業者にとって、このコストの荒波を飲み込む余地はほとんど残されていない。客単価が上がるという追い風が吹いているはずなのに、なぜ過去最多となる100件超の事業者が市場を去ったのか。それは、今の市場が
「売れば売るほど損が広がる」
という、これまでの常識が通用しない場所へと変質してしまったからにほかならない。売上を追うことが、必ずしも事業を続けることにつながらない。この救いのない矛盾が、現場の隅々にまで影を落としているのだ。