「遮断機のない踏切」今後なくせるのか? 改修費1か所「1500万円以上」という現実、膨大な更新負担と安全投資の行方とは

キーワード :
, ,
踏切は全国で減少を続ける一方、今も第3・4種踏切が約1割残り、1か所の改修費は1500万~2500万円にのぼる。近鉄はAI見守りを本格導入し、限られた資金と人手の中で安全をどう確保するかが問われている。

踏切数減少の長期傾向

踏切の数は減少しているが、依然第3、4種踏切は残っている(画像:国土交通省)
踏切の数は減少しているが、依然第3、4種踏切は残っている(画像:国土交通省)

 日本の風景から、踏切が少しずつ姿を消している。国土交通省の資料をひも解けば、その歩みは一目瞭然だ。踏切改良促進法が産声を上げる前の1960(昭和35)年、全国には7万か所を超える踏切が点在していた。それが立体交差化や路線の統合といった地道な努力を積み重ね、2022年度には3.2万か所にまで減少している(54%減)。

 なかでも、遮断機や警報機を持たない、いわゆる「危険な踏切」は優先的に整理されてきた。しかし、今なお全体の約1割には、こうした設備が備わっていない。

 現在の構成比を見れば、リスクの高い場所から順に手を打ってきた結果、第1種踏切が相対的に高い割合を占めるようになったことがわかる。いわば、淘汰の第一段階は終えたといえるだろう。だが、問題はここからだ。今もなお残る踏切の多くは、険しい地形や密集した住宅地、あるいは地域住民にとってほかに代えがたい生活道路となっているなど、廃止も改良も一筋縄ではいかない場所ばかりなのである。

 こうした難所を第1種へ格上げしようとすれば、立ちはだかるのはやはり経済性の壁だ。朝日新聞(2024年5月17日配信)の報道によれば、1か所を第1種へ改修するために要する費用は1500万から2500万円にものぼるという。

 国の補助金制度も存在する。赤字路線には半額、黒字路線にも3分の1の公的支援が出る仕組みだ。しかし、これらはあくまで設置のための初期投資に対するもの。日々の点検や部品の交換といった、将来にわたって発生し続ける維持費にまでは手が回らない。物理的な設備を増やせば増やすほど、鉄道会社の固定費は重くのしかかることになる。

 安全をどこまで追求すべきか、そして限られた公的資金と企業の原資をどこへ投じるべきか。私たちは、数字の減少を喜ぶ段階を過ぎ、より切実な投資の優先順位を問われる局面を迎えている。

全てのコメントを見る