N-BOX「5年連続首位」──それでもホンダ最大6900億円赤字、国内独走・EV失速が映す“収益構造のねじれ” ネットの声から読む
維持費重視の消費構造

N-BOXが選ばれる理由は、購入後の維持費という極めて現実的な強みに集約される。税金の安さや部品代の手頃さ、そして燃費の良さといった、日々の暮らしに直結する負担の軽さがある。ネット上の反応を見ても、
「税金だけでなくタイヤも小さく、修理代が安上がりで助かる」
といった声や、「中古価格が落ちにくいため、手放す際の損が少ない」という資産価値への評価が目立つ。「維持費が安いからこそ、家族用の予備として置きやすい」というコメントもあり、実利を重んじる層の厚さがうかがえる。
ホンダは2025年12月末時点で4兆円を超える手元資金を抱え、自己資本比率も38%と財務の土台は安定している。しかし、その収益の柱が利益の薄い軽自動車に依存している事実は、経営上、重い意味を持つ。中古相場の安定が次の買い替えを促す循環は、あくまでガソリン車中心の仕組みの上で成り立っている。利用者が求める「低コスト」という壁は、結果としてEVへの移行を阻む要因にもなりかねない。買い手が求める安さと、巨額の赤字を見込む企業側の苦境。そこには埋めがたいずれが生じている。
今回の巨額赤字は、EV事業に関わる資産価値の見直し、いわゆる減損が主な要因だ。従来予想から最大9900億円もの下振れであり、EV関連の損失は累計で最大2兆5000億円にのぼる。そのうち、実際に手元から流出する資金も1兆7000億円規模という途方もない数字だ。
ホンダのEV販売そのものは、新型の軽EV投入もあり、前年度比26.7%増の7万2527台まで伸びてはいる。だが、国内の新車販売全体に占める割合はわずか1.9%。市場の広がりは依然として限定的だ。この鈍い歩みのなかで、先行して投じた巨額資金の回収は困難を極めている。ネットでは「EVシフトの判断ミスではないか」という厳しいコメントや、
「N-BOXの成功だけでは世界市場での戦いには限界がある」
といった批判も渦巻く。同社の三部敏宏社長は、2040年に販売のすべてを電動車にするという野心的な目標について「現実的には達成困難と考えている」と言及し(『日本経済新聞』2026年3月12日付け)、北米で予定していた開発の一部中止も決断した。4兆円超の資金を持ちながらも、N-BOXで地道に積み上げた利益が、次世代への投資という荒波に飲み込まれていく。将来への備えが現在の経営を圧迫するという、出口の見えないジレンマが続いている。