「安すぎて不安になる」 値上げ5%の中で進むタイヤの正体――ナショナルブランドと新興勢力の間で進む主導権の変化
物価上昇とタイヤ価格高騰が続くなか、PBタイヤは国内メーカーの生産力と小売網を背景に価格優位を保てるのか。アジアンタイヤの台頭も進む中、品質・価格・安心の競争構造が市場を揺らしている。
アジアンタイヤの台頭

物価の押し上げ圧力が強まるなか、タイヤ市場におけるPBの立ち位置が改めて問われている。コストを削ぎ落とす仕組みと国内メーカーの生産力を掛け合わせたその強みは、一見すると盤石だ。しかし、視線を外に向ければ、アジアンタイヤという強力なライバルが猛追している事実に突き当たる。
2024年の世界市場を見渡すと、売上上位10社のなかにはハンコックや中策ゴムといった新興勢力が名を連ねる。とりわけ韓国のハンコックは、いまや住友ゴム工業に肩を並べる規模を誇る。メルセデス・ベンツやBMW、さらには国内主要メーカーの新車装着タイヤに採用されるなど、その実績は枚挙にいとまがない。もはや「安かろう」の域を脱し、世界水準の開発力を備えた脅威へと変貌を遂げている。
こうした海外勢の技術向上と知名度の高まりに対し、PBタイヤが繰り出す最大の対抗策は、国内に張り巡らされた分厚い店舗網にある。タイヤという商材は、ポチれば済むネット通販とはわけが違う。購入後の履き替え作業や廃タイヤの処分がセットであり、全国に拠点を持つ小売店が自社製品を直接提供できるという強みは、一朝一夕には崩せない巨大な壁だ。
また、万が一の品質トラブルが生じた際の「顔が見える」対応力も無視できない。海外メーカー品に対して心のどこかで拭いきれない不安を抱く層にとって、国内の大手資本が責任の所在を明確にしているPBタイヤは、目に見えない安心感という価値をその価格に内包しているといえる。
使い手にとって選択肢が広がることは、結果として製品の使い勝手を底上げする。競争が激しさを増すことで、価格と性能のバランスが取れた一品が市場に溢れ、手頃ながらもしっかりと走るタイヤが当たり前の存在になっていく。