南海フェリー撤退 “2時間航路”はなぜ競争に勝てなかったのか?――明石海峡大橋が変えた本州~四国ルートとは
年間97万人から35万人へ。所要2時間の中途半端な強みは、明石海峡大橋の開通で失われた。2021年度以降は債務超過が続き、船の更新も困難となる中、南海フェリーは2028年撤退へ。残る需要と災害時の役割をどう見るか、地方交通の現実が問われている。
民間と公共の対立軸

南海フェリーをめぐる議論は、採算を重んじる民間の考え方と、代わりの経路を確保するという公の考え方が正面からぶつかる地点にある。2時間という所要時間は、市場での競争では高速バスや大橋に及ばず、収益を得にくい状況を生む。一方で、物流ドライバーの休息や災害時の輸送路として、見過ごせない役割も持つ。本稿で示した
・公的支援の限界
・インフラの多面的な価値
という対立を踏まえると、論点は民間事業として続けるのか、採算を無視して維持するのかという二者択一にとどまらない。短距離航路を、利益を稼ぐ事業として見るのか、それとも広域の交通網を支える仕組みとして位置づけるのかが問われている。
従来の旅客中心の事業には限界があるのは確かだ。しかし、反対意見が示す
「社会の保険」
としての役割も、代わりがきかない現実である。
結局のところ、南海フェリーの撤退判断は、一企業の経営のつまずきにとどまる話ではない。モータリゼーションと巨大橋の整備が進んだ日本において、
「多目的・一般旅客型の短距離フェリー」
という形そのものが役割を終えつつあることを示している。
今後の焦点は、伊勢湾フェリーのように公設民営化や上下分離方式を取り入れ、役割を絞った形へ進むのか、それとも納税者の公平性を重視し、明石海峡大橋という一つの経路に地域の行く末を委ねる判断を受け入れるのかに移る。
今回の事案は、同じように「2時間の壁」を抱える各地のローカル航路にとって、これまでの延長では先が見えないことを示す警告だろう。読者の皆さんはどう考えるだろうか。