南海フェリー撤退 “2時間航路”はなぜ競争に勝てなかったのか?――明石海峡大橋が変えた本州~四国ルートとは
筆者への反対意見

一方で、今ある需要だけで要るかどうかを決めるのではなく、幅広い見方が欠かせないとの反論もある。南海フェリーは和歌山と徳島を結ぶ唯一の海上交通であり、地域の経済に与える影響も小さくない。
また広い物流のつながりという観点から見れば、南海フェリーは災害や事故の際に代わりとなる経路を担う重要な基盤でもある。明石海峡大橋の利点ばかりが強調され、
「もし明石海峡大橋の経路が長く止まった場合にどうするのか」
という視点の議論は、ほとんど見えてこない。
阪神・淡路大震災では、止まった東海道・山陽本線を補う回り道として加古川線が役割を果たした。東北大震災では、磐越西線を使い、石油を貨物列車で運んだことも記憶に残る。加古川線も磐越西線も、ふだんは赤字の地方路線である。それでも、つながりの一部として残る意味はある。
もちろん、公共交通は採算だけで評価すべきではないという考えの裏には、自治体の財政の限界や、バスや鉄道など他の交通機関との税負担の公平性という、厳しい現実がある。
特定の航路を維持するために多くの公金を投じれば、地域全体の交通網のバランスを崩す不公平な扱いになりかねない。
それでも求められるのは、安易な廃止ではない。限られた公的資源をどう振り分け、無理なく続けられる形で「社会の保険」を保つのか。そこまで踏み込んだ議論が欠かせない。
また、今も一定の需要がある点は見過ごせない。航路廃止の動きから存続に転じた例として、かつて近鉄と名鉄の傘下にあった伊勢湾フェリーがある。廃止提案の前年である2009(平成21)年度の実績は、南海フェリーと同じく約35万人だった。
現在も利用者数は減り気味ではあるが、2024年度は1億2786万円の黒字を確保している。一定の需要があれば、経営のやり方しだいで存続の余地はあるといえる。
さらに、トラックドライバーにとっては、海上区間を休憩時間に充てられる利点がある。環境面でも、陸路と海路のどちらが二酸化炭素の排出を抑えられるかは明らかだ。旅客輸送でも、短い時間でも船旅を楽しむ需要は確かにある。
南海フェリーには、経営と営業の両面で見直しの余地が残されている。