南海フェリー撤退 “2時間航路”はなぜ競争に勝てなかったのか?――明石海峡大橋が変えた本州~四国ルートとは

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年間97万人から35万人へ。所要2時間の中途半端な強みは、明石海峡大橋の開通で失われた。2021年度以降は債務超過が続き、船の更新も困難となる中、南海フェリーは2028年撤退へ。残る需要と災害時の役割をどう見るか、地方交通の現実が問われている。

筆者の意見

南海フェリーのウェブサイト(画像:南海フェリー)
南海フェリーのウェブサイト(画像:南海フェリー)

 結論からいえば、南海フェリーは明石海峡大橋の開通時点で、幹線航路としての役割を大きく縮めていた。開通前は関西と四国を結ぶ重要な航路であったが、現在は和歌山県と徳島県を結ぶ地域の移動を補う交通としての性格が強い。

 和歌山県と徳島県、両市や関係機関は2009(平成21)年度に「和歌山徳島航路活性化協議会」を立ち上げ、さまざまな取り組みを進めてきたが、旅客の減少は止まっていない。とくにコロナ禍の2020年度には、前年から20万人以上減少した。その後は持ち直しの動きがあるものの、コロナ前の水準には戻っていない。

 南海フェリーは旅客とトラックの輸送を担うが、旅客の動きを見ると立ち位置ははっきりしている。国土交通省の「全国幹線純流動調査」によれば、徳島~大阪間はバスが年間102万6000人に対し船は3万9000人にとどまる。一方、徳島~和歌山間ではバスが年間2000人に対し船が6万4000人と逆転している。

 関西圏への主な移動はすでに高速バスへ移っており、南海フェリーは地域間の輸送として一定の役割を持つにとどまる。和歌山港に近い関西国際空港への移動でも、高速バスの優位は明らかだ。徳島駅と関西空港を比べると、フェリーは約1000円安いものの、所要時間はほぼ同じで、乗り換えが不要で確実性の高い高速バスが選ばれている。

 船旅としての価値でも、2時間という乗船時間は不利に働く。明石海峡大橋と競合するジャンボフェリー(神戸~高松)は、船内設備を整え、4時間の船旅としての魅力を打ち出し、多くの旅客を集めた。一方、2時間では船の時間を楽しむには短く、移動手段としてほかの交通との競争にさらされる。

 ではトラック輸送はどうか。時刻表には深夜2時台の便があり、一定の需要があることがうかがえる。国土交通省の「物流センサス」を見ると、徳島~大阪間はトラックが3日で6874tに対し、フェリーは852tにとどまる。これに対し、徳島~和歌山間はトラック473t、フェリー424tとほぼ同水準である。

 徳島~大阪間ではトラックが大半を占めるが、フェリーも一定の物流を担っている。ただし、短距離フェリー全体の状況は厳しい。2015年の休憩時間の扱い見直しや、いわゆる2024年問題で長距離フェリーの需要は増えたが、短距離ではその効果は限られる。

 国土交通省四国地方整備局は、関西~高松~八幡浜~九州を結ぶフェリー併用の近道で約200km短くなると見ているが、南海フェリーはこの主要な近道に入っていない。このため、役割は地域内の物流に偏りやすい。一定の需要はあるものの、地域の輸送手段の枠を抜け出せていない。

 便数を減らして効率を上げる方法もあるが、減便は物流の使い勝手を下げ、さらなる利用減を招く。バスやトラックといった代替手段があることに加え、燃料費や人件費、維持費の増加、船員の確保難を踏まえると、南海フェリーの撤退は避けがたい流れといえる。

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