「車内置き去り事故」に潜む楽観バイアス! 対策ゼロが8割という現実、なぜ悲劇を知りながら備えないのか
認知と行動の乖離が示す実態

子どもの車内置き去りによる熱中症事故は、繰り返される深刻な社会問題だ。三洋貿易(東京都千代田区)が2023年に公表した「子どもの車内置き去り実態調査2023」によれば、小学生以下の子どもを乗せて運転するドライバー3377人のうち、91.6%が事故の発生を認識していた。しかし、その一方で78.9%が「子どもを無意識に車内へ取り残してしまうことに対する対策を行ったことはない」と回答している。
この9割近い認知と行動のずれは、リスクを自分とは無関係だとみなす強い楽観的な認識の表れである。消費者が安全を自ら費用を負担して得る付加的な価値ではなく、初めから備わっているべきものとして捉えていることが、市場での自発的な普及を妨げている。
さらに調査では、1年以内に子どもを車内に残したまま離れた経験がある人が20.4%にのぼり、そのうち5.1%が子どもの体調不良を招いていた。注目すべきは、80.8%が「今後も子どもの車内への取り残しは発生する」と回答し、その理由の60.5%を「保護者の意識が低いから」が占めている点である。
これは事故の責任を個々の意識の問題に帰すことで、安全を確保するために必要な物理的な負担や費用から目をそらす構図を示している。安全を個人の注意に依存する問題として扱う傾向が、技術的な対策への投資意欲を抑えている。
自己過信の広がり

こうした結果を受け、NPO法人Safe Kids Japanの理事長である山中龍宏氏は、
「『自分だけは大丈夫』という考え方は、車内置き去りのみならず、あらゆる事故において共通しています」
と指摘する。人は誤りを避けられないという前提に立ち、気持ちに頼るのではなく、誤りを補う仕組みを整える必要がある。こうした意識と行動の間にある隔たりを、技術がどのように埋めようとしているのかを考える。