「車内置き去り事故」に潜む楽観バイアス! 対策ゼロが8割という現実、なぜ悲劇を知りながら備えないのか

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子どもの車内置き去り事故をめぐり、送迎バスでは義務化が進み、全国5万台超の導入が進む一方、乗用車では対策はなお途上にある。調査では91.6%が認識しながら78.9%が未対応という乖離も明らかになり、技術と行動のずれが課題として浮かぶ。

法整備による需要の顕在化

国土交通省「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン」概要(画像:国土交通省)
国土交通省「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン」概要(画像:国土交通省)

 2022年9月、静岡県牧之原市の認定こども園で、3歳の女児が送迎バスに取り残され、重い熱中症で亡くなった。この出来事を受けて政府は急ぎの対策をまとめ、2023年4月から、幼稚園や保育所などが使う送迎バスに、置き去りを防ぐ安全機器の搭載を義務付けた。こども家庭庁が把握する対象車両は全国で5万4345台にのぼる。この法の整備は、それまで表に出ていなかった需要を明らかにし、安全機器の市場を動かすきっかけとなった。

 国土交通省の指針では、

・降車時確認式
・自動検知式

というふたつの方式が示されている。降車時確認式は、エンジンを止めると車内で警報が鳴り、運転手が車内の最後部まで移動して確認ボタンを押すことで警報が止まる仕組みである。この操作が行われないまま一定の時間が過ぎると、車外に向けた警告へ切り替わる。一方の自動検知式は、エンジン停止後にカメラや感知装置が車内を見守り、子どもの存在を捉えると車外へ警報を出す。

 どちらの方式でも、確認が行われなかった場合には速やかに車内へ知らせを出し、15分以内に車外へも伝えることや、機器の不具合や電源の喪失が起きた際にドライバーへ知らせることが求められている。行政が具体的な基準を示したことで、質の低い製品の参入を抑え、市場全体の信頼を高めた。

 三洋貿易の調査によれば、義務化の開始後、「過去1年間に子どもだけを送迎バスに残して車を離れたことがある」と答えた割合は1.5%となり、前年の5.6%から大きく下がった。こども家庭庁の調査では、全国の送迎バスへの導入率は2023年12月時点で72.5%に達している。同庁は2024年3月までにほぼ全てに近い導入を見込んでいた。この変化は、個々の注意に頼る不安定な要素を、同じ働きを持つ仕組みに置き換えることが、危険の抑制に有効であることを示している。

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