「EVを9か月で完成させたんだって」──大手IT企業が車両開発に挑戦、上場廃止で既存メーカーとの競争構造どう動くのか
2030年にSDV世界販売1200万台、シェア3割を目指す日本の自動車産業。SCSKはわずか9か月でEVコンセプト車を開発し、ソフトウェア主導の車づくりで産業変革への挑戦を鮮明にした。
ソフトウェア主導への競争環境

SCSKの取り組みが、すぐに既存メーカーの地位を揺るがすわけではない。車両の安全性や品質管理、生産能力、販売網など、日本のメーカーが長く積み上げてきた強みは依然として大きい。ただ、競争の重心がハードウェアからソフトウェアへ移りつつある流れは避けがたい。SCSKの動きは既存メーカーと正面から競うものというより、産業全体の変化を促す刺激として受け止めるべきものだろう。
IT分野では、日本は米国や中国に後れを取ったままだ。もし今回の変化にも対応できなければ、基幹産業の力そのものが弱まりかねない。国内企業が従来のように多くを自社で抱え込むやり方に固執すれば、海外の巨大企業にシステムの中枢を握られる可能性もある。そうなれば、日本は外側の箱を組み立てる役割にとどまるおそれがある。2030年に掲げた1200万台という目標も、価値の高い部分を他国に握られれば、台数だけが残る結果になりかねない。
SCSKは今後、住友商事と一体で事業を進めることになる。この判断は、短期的な利益よりも将来の産業の土台を見据えたものといえる。今回の動きを、IT企業の参入という一例で片づけてしまうのは早計だろう。日本のメーカーが自らの壁を越え、ITの力をどう取り込むのか。そこが今後の立ち位置を左右する。これまでの慣習に揺さぶりをかけるこの試みは、停滞感が続く産業に新しい動きをもたらす可能性がある。