「EVを9か月で完成させたんだって」──大手IT企業が車両開発に挑戦、上場廃止で既存メーカーとの競争構造どう動くのか

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2030年にSDV世界販売1200万台、シェア3割を目指す日本の自動車産業。SCSKはわずか9か月でEVコンセプト車を開発し、ソフトウェア主導の車づくりで産業変革への挑戦を鮮明にした。

EV開発の迅速性

車載システムの開発実績(画像:SCSK)
車載システムの開発実績(画像:SCSK)

 SCSKのEVプロジェクトは、これまでの車づくりの常識とは少し違う位置にある。SCSKはシステム開発やクラウド分野を主な事業としてきた。2025年のジャパンモビリティショーで公開したEVコンセプト車は、完成までにかかった期間がわずか9か月だった。一般的な車両開発では3年から5年ほどかかることが多い。それと比べると、かなり短い。海外企業との分業や部品の共通化を進めたことで、この期間を大きく縮めたという。

 この開発の速さを支えたのが、グループ内の技術だ。2024年に子会社となったネットワンシステムズの通信技術に加え、ベリサーブが持つソフトウェア検証の力も使われている。実物の車両で行う試験を減らし、デジタル空間での検証を中心に進めたことも大きい。車体の土台などは外部から調達し、制御ソフトウェアの開発に資源を集中させた。車の価値をどこで生むのかを見極めたうえでの進め方といえる。

 公開された車両には、8K画質の44.6インチ大型ディスプレイを備えた「インテリジェント・コックピット」が搭載されている。AIが利用者の好みに合わせて空調を調整したり、観光情報を提案したりする機能を持つ。車内で過ごす時間そのものに目を向けた内容だ。

 このEVは量産を前提にしたものではない。ソフトウェアを中心に据えた新しい開発の考え方を示すためのモデルである。従来のように走行性能を主な競争軸とする車づくりとは少し方向が異なり、車内のデジタル体験を優先している。IT企業が車両開発に深く関わる余地があることを示した形だ。

 背景にあるのは、ソフトウェアが車両の価値を左右する「SDV」という考え方である。機械の性能だけではなく、AIや機能更新によって価値を高め続けるという発想だ。自動車は移動のための機械というだけでなく、更新され続けるデジタル製品へと姿を変えつつある。

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