「EVを9か月で完成させたんだって」──大手IT企業が車両開発に挑戦、上場廃止で既存メーカーとの競争構造どう動くのか
2030年にSDV世界販売1200万台、シェア3割を目指す日本の自動車産業。SCSKはわずか9か月でEVコンセプト車を開発し、ソフトウェア主導の車づくりで産業変革への挑戦を鮮明にした。
モビリティOS企業の志向

同社の戦略を理解するうえで押さえておきたいのは、同社が完成車メーカーを目指しているわけではない点だ。狙いはむしろ別のところにある。ソフトウェアが車の価値を左右する時代に、基盤となる部分を担うことだ。
これまでの自動車産業では、エンジンやシャシーといった機械部分が競争力の中心だった。しかし今後は、車載OSやクラウドとの連携、機能更新、AIサービスなどが収益の源になると見られている。IT企業が産業の中心に関わる余地が広がっている。
SCSKは40年以上にわたり車載ソフトウェアの開発に関わってきた。完成車メーカーとの関係も長い。また、世界的なソフトウェア取引市場であるSDVerseにも参加し、存在感を高めようとしている。従来の車づくりでは、ひとつの企業が多くの領域を抱え込む形が一般的だった。今回のプロジェクトではその形を取らず、得意分野を持つ企業と組む水平型の分業を採用している。このやり方は開発の速さを高め、費用を抑える効果も見込める。
同社が見据えるのは、自社のERPパッケージ「ProActive」で培った大規模システムの運用力を、車両全体を動かす基盤へと広げることだ。上場廃止で、短期的な株価の動きに振り回されず、長い視点で基盤づくりに取り組める体制が整う。部品を売って一度だけ利益を得る形ではなく、OSのライセンスや機能更新のサービスによって収益を積み上げていく。そうした仕組みへの転換を見据えているだろう。
住友商事が持つ世界の物流や商流のネットワークと、SCSKの技術が組み合わされば、移動そのものの事業の形も変わる可能性がある。車両を売るだけではない、新しい価値の生み方が視野に入っている。