「赤字でも撤退しない」テスラ保険の正体――最大40%の割引を提示、それでも拡大を続ける“真の狙い”とは

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EVメーカーが保険会社に変貌する。テスラは全米13州で展開し、売上高10億ドル規模へ拡大する一方、損失比率103の赤字も辞さない。その狙いは保険収益ではなく、自動運転を磨く「走行データ」の囲い込みにある。

プライバシー保護の課題

コネクティッドカーから得られる走行データ(画像:あいおいニッセイ同和損保)
コネクティッドカーから得られる走行データ(画像:あいおいニッセイ同和損保)

 FTCによるGMおよびOnStarへの最終命令は、情報の取り扱いに関する規制の波がこの産業にも本格的に押し寄せている実態を示している。テスラは私事の保護に対する関心が高いカリフォルニア州の所有者には、運転スコアと保険料の連動を行わず、あくまで参考情報として扱っている。

 これは規制当局との対立を避けつつ、他州で実績を積み上げることで、自律走行の実現に向けた優位性を確立しようとする振る舞いだ。

 自律走行技術の実用化には膨大な走行データが不可欠となる。情報の不足は計算手法の学習を遅らせ、社会への普及を遠ざける。一方で個人の移動履歴や行動パターンは極めて機密性が高く、無制限の収集は社会的な反発を招きかねない。

 情報の主権を巡る議論は今後いっそう激しさを増すだろう。自律走行に必要な情報の確保と個人情報の保護の間で妥協点が探られているが、制度面の整備は追いついていない。

 日本でも走行情報に基づいた保険料の算出には理解が広まりつつある。国内メーカーがテスラの手法を用いた事業に参入する余地はある。だが保険事業だけで収支を合わせることは容易ではなく、EVの修理コストも高止まりが続いている。

 保険事業を車両販売や情報の循環体制の一部として機能させない限り、継続は困難となる。利用者は情報の保護を優先するか、情報を差し出すことで移動コストを下げるかという、二者択一の判断を迫られることになる。

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