「赤字でも撤退しない」テスラ保険の正体――最大40%の割引を提示、それでも拡大を続ける“真の狙い”とは
EVメーカーが保険会社に変貌する。テスラは全米13州で展開し、売上高10億ドル規模へ拡大する一方、損失比率103の赤字も辞さない。その狙いは保険収益ではなく、自動運転を磨く「走行データ」の囲い込みにある。
契約者のメリットとリスク

テスラは安全運転を徹底する契約者に対し、保険料の割引を適用する。無事故・無違反であれば
「約40%」
の割引を受けられ、交通違反1枚で約25%、事故1件で約15%、飲酒運転歴がある場合でも7%程度の割引となる。この高い割引率は質の高い走行データを提供したことへの報酬としての側面を持つ。
一方でEV特有の性能が壁となる。鋭い加速性能や、減速時に働く回生ブレーキの影響で急な速度変化が起きやすく、操作に習熟するまではスコアが伸び悩み、保険料が高止まりするリスクがある。
2025年に導入された「安全運転スコア V2.2」では、評価の基準がさらに厳格になった。前方衝突警告の頻度を評価から外す代わりに、時速85マイル(137km/h)以上の走行や、前の車に対して速度を出しすぎている時間の割合を厳しく測定するようになった。この変更により保険料が跳ね上がる事例が相次いでいる。
この厳格な採点は、自律走行システムにとって処理が難しい極端な挙動を繰り返す利用者を、高い金銭的負担によって枠組みの外へ押し出す役割を果たす。システム全体の安全性を維持し、学習データの純度を高めるために、不適合な利用者を経済的な力で選別している。
契約者は安価な維持費を得るために、AIが予測しやすい一定の型に沿った運転を求められることになる。