「赤字でも撤退しない」テスラ保険の正体――最大40%の割引を提示、それでも拡大を続ける“真の狙い”とは

キーワード :
, ,
EVメーカーが保険会社に変貌する。テスラは全米13州で展開し、売上高10億ドル規模へ拡大する一方、損失比率103の赤字も辞さない。その狙いは保険収益ではなく、自動運転を磨く「走行データ」の囲い込みにある。

狙いは走行データの独占

テスラ(画像:Pexels)
テスラ(画像:Pexels)

 車両産業は電動化や自動運転、ソフトウェア主導の車両開発の進展により、ハードウェア重視からデータを核としたソフトウェア主導へと変貌を遂げている。この潮流を体現するのが、米国の電気自動車(EV)メーカー、テスラによる保険事業への参入だ。

 テスラは2021年10月から米国で事業を開始し、2024年の売上高は約10億ドル(約1560億円)に達した。現在は全米13州で展開している。

 テスラにとって保険事業は多角化の枠に収まるものではない。同社最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は2020年7~9月期の決算発表で

「今後、自動車事業のバリューの30~40%が保険事業になるだろう」

とその重みを語った(『日経クロステック』2021年11月25日付け)。この発言の裏には、保険を車両販売後の収益源とするだけでなく、完全自動運転(FSD)の精度を高めるための、生きた学習データを吸い上げる仕組みとして活用する思惑がある。

 提供される保険は自社の車両と所有者が対象だ。契約者の保険料は、運転支援機能を活用した「安全運転スコア」によって走行内容を数値化し、月ごとに算出される。スコアが高いほど安全と判断されて安くなり、低ければ高くなる。この評価はリアルタイムで変動し続ける。テスラの狙いは、

「ハード、ソフト、そしてデータを一体化させたネットワーク」

を完成させることだ。この保険の仕組みは、過去の事故統計に依存する従来の不確かな予測を、現時点の走行事実に基づく確信へと塗り替える役割を果たすだろう。

全てのコメントを見る