「赤字でも撤退しない」テスラ保険の正体――最大40%の割引を提示、それでも拡大を続ける“真の狙い”とは
EVメーカーが保険会社に変貌する。テスラは全米13州で展開し、売上高10億ドル規模へ拡大する一方、損失比率103の赤字も辞さない。その狙いは保険収益ではなく、自動運転を磨く「走行データ」の囲い込みにある。
保険事業の収支

調査会社S&Pグローバルによると、テスラの保険事業における年間損失比率は2024年時点で103ポイントとなり、実質的に
「赤字」
の状態にある。この指標は収支が釣り合う点を100としており、100を上回れば赤字を意味する。一般的な保険の指標が60から80台で推移するなかで、テスラが参入以来100を下回ったことは一度もない。
赤字を招いているのは、EVの修理費用が高止まりしている事実だ。搭載されるバッテリーや高精度センサーは軽い接触でも交換が必要となりやすく、保険料の引き上げだけでは損失を吸収しきれていない。部品供給の制約や修理を自社網に限定している点も、支出を増やす要因となっている。
だが保険業界の尺度で不採算とされるこの状況を、テスラは別の側面から評価している。10億ドルの売上に対し数%の赤字が出たとしても、それは自動運転を完成させるための実走行データを収集するための、効率的な研究開発費に相当する。
AIの学習に投じる莫大な予算と比較すれば、保険事業の赤字は極めて質の高い情報を集約するための安価な対価となる。
保険部門が特定した「修理費を押し上げる構造上の弱点」は、すぐさま車両の作り込みの現場へと戻される。保険事業は収益を生む目的を超えて、ハードウェアの耐久性を高め、自律走行の精度を磨き上げるための強力な原動力として機能している。
赤字を容認してでも事業を続ける理由は、車両が走る行為そのものを未来の競争力へと変換する体制を維持するためだ。