「何を言ってもハラスメントになりそう」 若手指導に疲れ果てた上司たちの葛藤、7割が指導を手加減する現実とは
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残業ゼロ、叱責ゼロ、ノルマゼロ――理想的な職場に、思わぬ副作用が生じている。全国600人調査では、負荷が低い若手の54.8%が転職を検討し、管理職の68.3%は指導を控える現実が浮き彫りになった。
若手の合理性

若手が仕事の負荷が足りない状態を不安に思う背景には、将来の自分を守ろうとする考えがある。労働市場の状況が誰の目にも明らかになったことが大きい。転職サービスの普及によって、
・自分のスキルが外の世界でどう評価されるのか
・今の給与が適切なのか
を外部の基準で把握できるようになった。そのため、今の職場で成長する機会が得られないことは、将来、自分が選べる仕事の幅を狭めてしまうことにつながる。
実際、東京都で働く若手のうち、職場の負荷を「物足りない(非常に低い)」と感じる人の割合は16.4%に達しており、全国平均の11%を上回っている。さらに、負荷不足を感じている都内の層のうち44%が、1年以内の転職を考えている。情報の多い都市部ほど、周りと比べて自分が取り残されることへの焦りを感じやすいのだろう。
経済の仕組みが変化したことも影響している。専門的なスキルが報酬に結びつきやすい今の社会では、
「今、自分は鍛えられているか」
という感覚が、将来の安心感に直結する。負荷が低い層の54.8%が転職を検討しているという調査結果は、今の環境へのわがままではなく、自分の価値を維持しようとする、まっとうな判断だと受け取れる。
技術の変化が激しいことも無視できない。業務の自動化や高度化が進むなかで、代わりのきく業務だけを続けていると、いつか変化についていけなくなるおそれがあるからだ。若手にとって心地よすぎる環境は、大切にされている一方で、自分を鍛える貴重な機会を逃し、実質的な自分の価値が下がっていく状態として捉えられている。