「バスが遅すぎる」 NY市長が街路計画を再始動――速度「20%改善」で都市の“時間”は取り戻せるか?
ニューヨーク市長マムダニ氏が中断されていた街路計画を再始動。平均時速12.9kmのバスを最大20%高速化し、年間40時間相当の移動時間を市民に還元。公共空間の再配分で都市経済と生活の効率を根本から変える挑戦が始まった。
フォーダム・ロードの攻防

今回の計画のなかで、最も象徴的な取り組みがブロンクスのフォーダム・ロードだ。ここではBx12、Bx9、Bx17、Bx22という主要なバス路線を1日に13万人もの人々が利用しているが、車による渋滞に巻き込まれ、時速4マイルという極めて遅いスピードでしか進めていない。
この地域の背景を見ると、世帯の62%が自家用車を持っていない一方で、住民の71%が公共交通機関や徒歩、自転車に頼って生活している。つまり、道路の混雑を生み出す側と、そのせいで時間を失う側が大きく食い違っているのだ。
ここに都市における不公平な状況が浮き彫りになっている。マムダニ市長が「働く市民」の時間を繰り返し強調するのは、この偏った権利のバランスを政治の力で整えていく狙いがあるからだ。移動にかかる時間の長さは、そのまま収入を得る機会の差につながる。進みの遅いバスを放置することは、車を買う余裕のない層に重い負担を強いているのと同じだ。
フォーダム・ロードでバスを優先させる仕組みを作ることは、交通の流れを改善するだけでなく、働く人々の手に時間という価値を戻すための重要な施策となるのである。