「バスが遅すぎる」 NY市長が街路計画を再始動――速度「20%改善」で都市の“時間”は取り戻せるか?

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ニューヨーク市長マムダニ氏が中断されていた街路計画を再始動。平均時速12.9kmのバスを最大20%高速化し、年間40時間相当の移動時間を市民に還元。公共空間の再配分で都市経済と生活の効率を根本から変える挑戦が始まった。

遅すぎるバスの代償

NY市内のバス専用レーン(画像:ニューヨーク市)
NY市内のバス専用レーン(画像:ニューヨーク市)

 ニューヨークのバスは、街の動きを停滞させる大きな弱点として長年批判されてきた。2024年の統計では市内のバスの平均時速はわずか7.99マイル(12.9km)となっており、特定の区間では時速4マイルから5マイルという、歩くのと変わらない遅さまで低下している。ブロンクスのBx12やBx9といった幹線では1日に13万人がバスに依存しており、年間では延べ4億900万人が利用しているが、彼らはこの異常な遅さによって本来使えるはずの時間を奪われている。

 今回の計画が掲げる目標は明快で、バスの速度を最大で20%向上させ、運行の遅れをなくして通勤時間を短くすることだ。クイーンズのヒルサイド・アベニューでは、道路の使い方の工夫によって速度が最大28%も上がった実績があり、これが今回の施策の根拠となっている。ここで注目すべきは、問題の本質が乗り物の数を増やすことではなく、道路という空間を誰にどれだけ割り振るかにあるという点だ。

 バス専用レーンの設置や違法駐車の徹底した取り締まり、信号の優先制御によって車線の役割をバス中心に切り替えれば、移動時間は目に見えて短縮される。これは、都市の限られた資源をより効率的な移動手段へ割り当てる行為だ。1日10分の短縮は、年間で40時間近い自由な時間の創出を意味する。

 この膨大な時間を数千万人の利用者に返していくことは、都市全体の労働力の質を高め、消費を活性化させる直接的な経済投資としての側面を持っているのだ。

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