「宿敵ですが、手を組みます」 なぜ韓国鉄鋼2強は合流したのか? 北米EV市場で生き残るための「物理的防壁」の正体

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韓国鉄鋼2強、ポスコとヒョンデ製鉄がルイジアナ州で58億ドル規模の合弁に合意。2029年稼働予定の製鉄所は、USMCA原産地規則対応と北米EV市場攻略を狙い、資本とリスクを分担する生存戦略の象徴である。

宿敵連合の必然

ポスコとヒョンデによる協業合意の公式発表(画像:HyundaiMotorGroup)
ポスコとヒョンデによる協業合意の公式発表(画像:HyundaiMotorGroup)

 長年のライバルが、米国で手を組んだ。韓国鉄鋼2強のポスコホールディングスと現代(ヒョンデ)製鉄は、ルイジアナ州の製鉄プロジェクトで資本提携に合意した。ポスコは5億8200万ドルを出資し、ヒョンデ製鉄主導の計画に20%参画する。総事業費は58億ドル、2029年の稼働を見込む。

 この提携の狙いは友好関係の強化ではなく、米国通商政策による構造変化への適応にある。USMCAは完成車メーカーに、使用する鉄鋼・アルミの70%以上を北米原産とすることを義務付ける。重要なのは、原産素材が北米で溶解・鋳造されることが求められる点だ。最終組立を米国に移すだけでは、アジア圏の供給網を排除する規制を満たせない。

 ヒョンデ自動車グループは北米で電気自動車(EV)生産を加速する一方、重要素材の域外依存を解消できずにいた。この不整合を放置すれば、原産地規則の遵守と関税回避の両立は不可能となる。さらに、通商拡大法232条による追加関税のリスクも調達の不確実性を高める。現地生産は、利益追求の手段ではなく、北米市場で生き残るための前提条件である。

 58億ドルの巨額投資は一社完結を阻み、ヒョンデ製鉄にとっては財務圧迫を避けつつ投資リスクを分散するため、ポスコの参画が不可欠だった。この製鉄所は、HMGMAへの供給を軸に、素材から完成車まで北米内で完結する体制を築く。制度、財務、供給網が重なり、かつての敵対関係を越えた提携は、北米市場での生存権を守る論理的帰結である。

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