「宿敵ですが、手を組みます」 なぜ韓国鉄鋼2強は合流したのか? 北米EV市場で生き残るための「物理的防壁」の正体
韓国鉄鋼2強、ポスコとヒョンデ製鉄がルイジアナ州で58億ドル規模の合弁に合意。2029年稼働予定の製鉄所は、USMCA原産地規則対応と北米EV市場攻略を狙い、資本とリスクを分担する生存戦略の象徴である。
日本産業への警告

ポスコとヒョンデの決断は、保護主義と脱炭素という二重の制約下で成立した現実解である。通商政策と環境規制が同時に企業行動を縛る状況では、一社で海外に巨額投資を行うリスクは急激に高まる。資本、需要、リスクを分担できる枠組みを構築できるかが、事業継続の前提となる。
日本勢の動きは対照的だ。日本製鉄のUSスチール買収は成立したものの、米国の通商・安全保障審査に膨大な時間を要した。これに対し韓国勢は、買収ではなく合弁と現地投資を組み合わせ、迅速に生産能力と供給網を整えている。通商政策が企業成否を左右する環境では、稼働までの時間自体が競争力に直結する。
日本の完成車メーカーや鉄鋼メーカーも、従来の系列依存型の排他的枠組みから脱却が求められる。国内資本による団結に固執せず、戦略的提携を通じて北米市場での資本、需要、生産の構造を組み直せるかが問われている。重要なのは主導権ではなく、不確実なリスクを誰がどのように引き受けるかを事前に定めることだ。
2029年に稼働するルイジアナの製鉄所は、単なる生産拠点ではない。貿易摩擦や規制強化が常態化する時代に、供給を途絶させない物理的な防壁として機能する。この先回りした北米拠点の確保は、日本の産業界にとって、生存戦略の遅れを突きつける深刻な警告となっている。