「宿敵ですが、手を組みます」 なぜ韓国鉄鋼2強は合流したのか? 北米EV市場で生き残るための「物理的防壁」の正体

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韓国鉄鋼2強、ポスコとヒョンデ製鉄がルイジアナ州で58億ドル規模の合弁に合意。2029年稼働予定の製鉄所は、USMCA原産地規則対応と北米EV市場攻略を狙い、資本とリスクを分担する生存戦略の象徴である。

強固な統合と残るリスク

鉄鋼工場のイメージ(画像:写真AC)
鉄鋼工場のイメージ(画像:写真AC)

 K-スチール連合は、素材から部品、完成車まで一貫して開発・調達できる体制を持つため、通商摩擦や物流混乱が起きても域内完結型の供給を維持しやすい。USMCAの原産地規則や関税リスクを考えれば、他社に対する優位性は明確だ。

 しかし、盤石に見える体制にも死角がある。北米の電炉大手、ヌーコアやスチール・ダイナミクスは複数拠点で高効率電炉を運用しており、薄板分野では豊富な操業実績と価格競争力を背景に、新規参入に強い圧力をかけてくる。最新の電気炉方式を導入しても、現地メーカーとのコスト競争を避けられるわけではない。

 建設コストも課題だ。米国内の資材費と労働コストは高止まりしており、総事業費58億ドルという計画は、最新鋭設備と270万t規模生産能力を同時に整備するには余裕のある水準ではない。将来の排出規制に対応した設備構成は環境費用を抑える一方で、初期投資を重くする。このバランスが計画内で収まるかは予断を許さない。

 さらに、共同事業には不安定さも伴う。提携は現状の利害一致に基づくもので、永続的な協調を保証するものではない。操業が軌道に乗り、市場環境が変化すれば、経営主導権や利益配分を巡る摩擦が表面化する可能性がある。素材価格の内部振替を優先するポスコと、完成車の価格競争力を重視するヒョンデでは、優先順位の違いが連携の機能不全につながるリスクもある。強固な構造であるほど、歪みが現れた際の影響は大きい。

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