あなたの街の「名門旅館」が消える日――インバウンド9.5兆円の陰で進む、「客はいるのに潰れる」という経済常識のバグ
2025年、インバウンドは4270万人、消費は過去最大の9.5兆円に達した一方で、宿泊業では267件の事業者が消え、地方では倒産が75%超。設備更新の遅れが業界の基盤を揺るがしている現実に、2026年は厳しい選別の年となる。
地方宿泊施設の収益構造

地方ではインバウンドが少なく、部屋を埋めることと宿泊料金を引き上げることの両方が難しい。そのため、固定費が増えても収入で補えない施設が多い。都市圏以外の倒産や廃業は全体の7割以上を占め、収益構造の弱さが明らかになっている。
古くなった建物を理由に閉鎖する施設も多く、直近5年で約14%に達している。設備を更新できない施設は、事業の継続が困難だ。建物の老朽化は信頼の低下にもつながり、接客やサービスでは顧客の信頼を取り戻せない。インターネット環境や設備を整えられない宿泊施設は市場から外れやすく、高額で魅力ある施設に資金や人材が集中することで二極化が進む。
「インバウンドが増えているから大丈夫」と考える声もある。しかし、利益を生むのは設備に投資して魅力を高めた施設であり、古く整備されていない施設まで顧客が訪れるわけではない。
「老舗だから固定客がいる」との意見もあるが、古い建物を修繕する費用には足りない。顧客層の高齢化や市場縮小の現実は、過去の評判では補えない。公的資金で維持を試みると、地域全体の宿泊料金を下げ、投資している施設の成長機会も減らすことになる。
「伝統だから変えられない」という考えは、経済の現実から目をそらすことにつながる。こうした議論は表面的で、実態の課題を正しく捉えていない。