「AI人材は年収1000万でも来ない」 自動車・輸送機業界、“育休取得率ワースト1位”が突きつける獲得の壁

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自動車・輸送機業界は、男性育休取得率67.2%、女性管理職比率3.7%と低水準にとどまり、組織の柔軟性や多様性が試されている。電動化やAI人材需要の急増に対応するには、従来の慣行を見直し、人的資本の活用を抜本的に再考する必要がある。

散布図が映す複合的な課題

男性育休取得率(横軸)と女性管理職比率(縦軸)を用いた業界散布図(画像:エフペリ)
男性育休取得率(横軸)と女性管理職比率(縦軸)を用いた業界散布図(画像:エフペリ)

 男性育休取得率と女性管理職比率を軸にした業界の分布を見ると、自動車・輸送機業界は両指標が低く、図の「左下」に位置している。

 ここには、現場の暗黙知や熟練工の勘といった個人の技能に深く依存し、その人でなければ業務が回らないという製造モデルの影響が反映されている。マニュアル化が困難な技能を重視しすぎるあまり、業務の標準化やバックアップ体制の構築が後回しにされ、特定の個人が現場を離れることを許容しにくい構造が生まれている。

 これが安定雇用を優先する職場文化と相まって、柔軟な組織対応を妨げている。比較対象として、男性育休の取得は進んでいるものの女性管理職が少ない電力・ガス業界(取得率91.6%、管理職比率4.3%)などを見ると、当業界の課題は「休み」も「登用」も同時に困難であるという、複数の要因が重なり合っていることがわかる。

 この領域にとどまることは、電動化や自動運転、ソフトウェア中心の事業環境への対応を遅らせるリスクを含んでいる。人的資本の改善は、数値を引き上げる取り組みに留まらず、組織の意思決定のプロセスや、職場文化そのものを根本から見直す課題として捉える必要があるだろう。

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