「脱炭素よりコストが勝った日」 物流大動脈が“理想”を拒否――アメリカ反旗と重油執着が突きつける「海上規制の形骸化」

キーワード :
世界的な温室効果ガス規制強化のなか、海運では依然として油燃料が多用される。既存船の半数以上がVLSFOを使用し、1億円規模のスクラバー設置も一部で実施されるなど、現実的制約とコストの間で企業は対応を模索している。

スクラバー設置と低硫黄燃料使用の選択

海運業界の燃料ジレンマ。
海運業界の燃料ジレンマ。

 海運業界で油燃料を使い続けるためには、SOxへの対応が避けられない。現場では大きくふたつの方法が取られている。ひとつはSOxスクラバーを設置して高硫黄燃料を使い続ける方法で、もうひとつはスクラバーを設置せずに低硫黄燃料を用いる方法である。スクラバーを取り付けるには初期費用がかかり、船のサイズにもよるが1億円前後を見込む必要がある。船体への設置費や運用を続けるための維持費も重なる。一方、低硫黄燃料であるVLSFOは、高硫黄燃料より1トンあたり数十から数百ドル高くなることがあり、この差額がスクラバー設置の経済性を支える要因となる。

 燃料価格には変動があり、スクラバーの費用回収が難しい時期も存在する。そうした状況では、新造船や納期の制約によってスクラバーを導入できないケースも少なくない。2020年のSOx規制開始以降、油燃料を用いる場合にスクラバーを選ぶか、低硫黄燃料で対応するか、明確な答えは未だ出ていない。

全てのコメントを見る