「脱炭素よりコストが勝った日」 物流大動脈が“理想”を拒否――アメリカ反旗と重油執着が突きつける「海上規制の形骸化」
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世界的な温室効果ガス規制強化のなか、海運では依然として油燃料が多用される。既存船の半数以上がVLSFOを使用し、1億円規模のスクラバー設置も一部で実施されるなど、現実的制約とコストの間で企業は対応を模索している。
既存船の長期使用と供給網の制約

海運業界ではCO2規制が進む一方で、重油や低硫黄燃料油(VLSFO)など従来の油燃料が依然として多く使われている。その背景には、経済性やインフラ、そして現実的な投資回収の課題が絡んでいる。貨物船の多くは建造後20年から30年以上にわたって使用されるのが一般的で、既存船を短期間で燃料転換可能な船に置き換えることは容易ではない。
高硫黄燃料を使用する選択肢も残されている。2020年に導入された硫黄規制では、原則として0.50%以下の硫黄分を含む燃料の使用が求められるが、VLSFOを使うか、排ガスを浄化する技術を併用して高硫黄燃料を運航する方法が現場では広く用いられている。こうした方法では、比較的安価な高硫黄燃料を維持しつつ、初期投資の回収も可能になる場合がある。
現在、主流となっている燃料はVLSFOと呼ばれる低硫黄燃料で、世界規模で見ても約半数の船が使用しているという。バイオ燃料の導入も進みつつあるが、まだ占有率は小さい。低炭素や代替燃料として注目される液化天然ガス(LNG)やアンモニア、メタノールはCO2削減には有効だが、世界の主要港で十分に供給インフラが整っているわけではない。供給網の整備には巨額の投資と時間を要し、すぐに全船に対応させることは難しい。
LNG燃料を導入する場合、船舶側と港湾側の双方で設備投資が必要となり、世界中の航路や港に平準化するにはなお時間がかかるのが現実である。