「部品値上げ、トヨタに言えない」――SNSを揺らした“5兆円負担”の衝撃、衆院選・春闘を前に、巨人が仕掛けた「全方位」の防御策
トヨタは過去4年半で約5兆円のコスト上昇を自社負担と公表し、春闘や国際競争力、将来の車両価格を見据えた複雑な戦略を示した。国内外に影響を及ぼす企業の判断が、日本の自動車産業の行方を左右する。
実質賃金の停滞と中古車市場の過剰利益

サプライヤーによる価格転嫁が最終製品に反映されると、消費者がその上昇分をどの程度受け入れられるかが、市場の今後を左右する重要な指標となる。
実質賃金(給与額そのものから物価上昇分を差し引いた、購買力ベースの賃金)の伸びが1%未満にとどまる一方、新車価格の上昇はそれを上回り、
「需要の明確な減退」
を招いている。自動車が地方で生活に欠かせない存在であることに変わりはないものの、車両の保有期間は長期化しており、買い替えを先送りする行動が定着している。
地方市場では、価格が変動しても需要が大きく揺れない低弾力性の傾向が見られる。これは、消費者の受容力が高いことを意味するわけではない。可処分所得が限界に達したことで、新車購入を断念せざるを得ない層が広がっていると考えられる。こうした状況のもと、2025年の中古車(普通・小型乗用車)登録台数は約320万台と前年を下回った一方、中古車販売大手ネクステージの2025年11月期連結営業利益は
「前期比51.4%増」
の約196億円と、過去最高を記録した。この乖離は、新車供給の停滞や価格高騰を背景に、中古車への需要が流通側に過剰な利益をもたらしている現実を示している。
原材料高の吸収や研究開発投資に苦慮する新車メーカーに対し、流通側が価格転嫁の余剰を享受する構図は、産業全体の投資余力を圧迫する。企業が正当な価格転嫁で利益を確保することを
「悪」
と見なす社会的感情も、次世代への投資資金を減らす要因となる。短期的な価格抑制を優先する風潮が、10年後の市場で日本の競争力を自ら失わせる負の循環を生んでいるのだ。