「救急車に道を譲る = 3000万円」の価値があった? 1分の代償が招く人命と経済への衝撃

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救急車の現場到着時間は平均10分、病院収容まで45分に達する現代、緊急自動車への進路譲渡は数分の差で数千万円規模の経済損失を防ぐ行動となる。都市の安全と経済効率を左右する不可欠な公共ルールだ。

路上駐車と交通渋滞による阻害

論文「救急車の走行阻害要因分析と走行支援方法に関する一考察」(画像:土木学会)
論文「救急車の走行阻害要因分析と走行支援方法に関する一考察」(画像:土木学会)

 緊急自動車の走行を妨げる要因は、ドライバーの対応だけではない。論文「救急車の走行阻害要因分析と走行支援方法に関する一考察」(名古屋工業大学社会開発工学科。小池則満、秀島栄三、山本幸司)によれば、名古屋市の救急隊を対象としたアンケートで最も多く挙げられたのは、

・路上駐車
・交通渋滞

だった。ドライバーの不適切な進路譲渡は、これに次ぐ要因とされる。

 さらに、道路状況や車両仕様も制約となる。路面の振動で速度を上げられない、避けるスペースが確保できないといった声がある。高規格化にともない車体が大型化し、通行が困難になったという指摘もあり、ハード面の課題が走行効率に影響している実態が浮かび上がる。

 国土交通省の試算では、日本全国の渋滞による経済損失は約12兆円にのぼる。全国の県庁所在地で道路混雑度ワースト1位となった鹿児島市では、渋滞による経済損失額を年間約410億円と試算し、市民ひとりあたりでは年間およそ7万円の損失に相当すると公表した。渋滞は

・物流の効率を下げ
・個人の時間を奪う

だけでなく、緊急時の対応力を低下させることで、救急搬送の遅延という深刻な被害を上乗せしている。

 道路の流動性を高めることは、移動の効率化という側面だけでなく、都市の安全性を担保する基礎的な投資といえる。路上駐車という個別の行動が、社会全体の移動効率を下げ、ひいては救急活動という緊急事態の対応力を削いでいる現状を直視しなければならない。

 道路という限られた空間における優先順位を整理することは、経済活動の回転率を上げ、安全な社会を維持するために欠かせない視点だ。

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