2026年、中国はリスクになる──日中の自動車産業、もはや“互恵”は幻想か? 「脱中国」では解けない戦略的不可欠性
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筆者への反対意見

ただし、こうした意見に対しては、メーカーごとの状況に基づいた反論も存在する。
例えば、トヨタ自動車に関する見方だ。トヨタは中国で膨大な雇用を生み、広範なサプライチェーンを築いている。中国政府にとっても、雇用の安定と投資維持は最優先事項であり、トヨタのような世界的企業を追い詰めることは、自国経済を痛めることになる。そのため、中国側も決定的な制裁には踏み切りにくいという抑止力が働いているとの見方がある。
一方で、ホンダや日産自動車については、中国市場での存在感低下が、皮肉にも政治的リスクを緩和しているという見方がある。中国側から見れば、かつての威光を失った企業を叩いても政治的なカードとしての価値は低く、圧力をかける理由そのものが消えているという考え方だ。これらの企業は、激しい摩擦を生むまでもなく、中国市場から静かに退場していく過渡期にあるという見方である。
さらに、スズキやマツダのように、中国事業の比重を戦略的に縮小してきた、あるいは元々規模が小さかった企業については、地政学リスクを過大評価すべきではないという主張も根強い。中国に依存した部品調達はすでに代替先の確保が進んでおり、たとえ中国市場での販売が途絶えても、グループ全体の存続に直結するような致命傷にはなりにくいという考えだ。各社が歩んできた戦略の違いが、そのままリスクへの耐性の差として現れている。
また、戦略的な観点からの有力な反論として、
「開発エコシステムとしての中国」
の重要性を指摘する声も強い。今の中国市場は、販売先だけでなく、電気自動車(EV)やソフトウェア定義車両(SDV)における世界最先端の実験場になっている。ここでの競争から完全に身を引くことは、次世代モビリティのグローバル標準や、現地の俊敏なサプライヤー網から遮断されることを意味する。
地政学リスクを恐れて中国から距離を置くことこそが、中長期的な技術競争力の喪失という、より致命的な経営リスクを招くという主張だ。日中双方が
「相手を排除すれば自国の産業進化も停滞する」
という高度な相互依存関係を維持する限り、政治の冷え込みを超えた実務レベルでの互恵関係は存続し続けるというリアリズムである。
ただし、これらの反論が正当性を持つ一方で、全社に共通して押し寄せる新たな波がある。それがデータ越境規制とソフトウェア管理の厳格化だ。自動運転技術やコネクテッドカーの進展にともない、車両が生成するデータの管理権を巡る争いは、今や軍事技術の争奪戦と重なっている。中国国内で収集されたデータが日本へ、あるいは日米間で共有されることへの規制は、今後さらに厳しくなるだろう。
これは現地の販売問題だけでなく、日本国内での研究開発や、グローバルなプラットフォーム戦略そのものの分断を強いることになる
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