「ネコ駅長」人気でも赤字850万円! 和歌山電鉄が上下分離再スタート、自治体負担増で「本当に地方線維持は可能なのか」
ネコ駅長で訪日客を集める和歌山電鉄貴志川線は、14.3kmで年850万円の赤字を抱える。全国で8割超が赤字の地方鉄道は、2028年を目標に上下分離方式へ活路を探る。観光と公共インフラの両立が、いま問われている。
自治体の意識に変化の兆し

鉄道の上下分離方式は沿線自治体などで構成する管理組織が線路や車両、駅舎などを保有し、鉄道事業者が運行に専念する仕組み。鉄道施設を公共インフラと考える欧州ではこの方式が推奨されている。
これに対し、みなし上下分離方式は鉄道事業者が運行と施設保有の両方を担い、自治体が固定資産税や設備更新など施設維持費の一部を負担する。組織変更など煩雑な手続きなしに支援できるが、上下分離方式に比べ、一般に自治体の支援が少ない。
みなし上下分離方式は和歌山電鉄のほか、群馬県の上毛電鉄、福井県のえちぜん鉄道、岡山県の井原鉄道、島根県の一畑電車など全国で導入されている。導入の結果、多くの路線が廃線の危機を免れた。
しかし、必要最小限の設備更新にとどめ、老朽化した施設や車両の更新を先送りする地方鉄道が少なくない。和歌山電鉄も南海電鉄から引き継ぎ時に供与された車両が今も現役だ。大幅な設備更新を迫られると、みなし上下分離方式では心許ない。
上下分離方式を導入したのは、岐阜県、三重県の養老鉄道、滋賀県の信楽高原鉄道、京都府、兵庫県の京都丹後鉄道、鳥取県の若桜鉄道など。2024年に上下分離方式へ移行した滋賀県の近江鉄道は、2025年3月期決算の鉄道事業営業損益が31期ぶりに黒字転換した。
近江鉄道の成功をきっかけに、上下分離方式導入を目指す自治体が少しずつ増えている。10月には2020年の熊本豪雨で被災し、5.9kmが不通になった熊本県のくま川鉄道に導入が決まった。かつては廃線か上下分離方式導入かを迫られた自治体が、多額の出費に躊躇して廃線を受け入れる事例が見られたが、少しずつ意識が変わりつつあるように見える。