交通再生の風雲児? 赤字バスを“儲かる会社”に変える「謎めいた会社」の正体
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バス事業を通じた地域投資

気になるのは、みちのりHDの補助金に対する考え方だ。佐渡汽船の第163期損益計算書では、経常利益が十分に出ているにもかかわらず、特別利益のなかに補助金収入2億5305万円が含まれている。バス事業などへの補助金は本来、赤字の補填として使われるはずだ。
しかし、みちのりHDは従来型の赤字補填としての補助金に異を唱えている。国土交通省が2022年4月に実施した第2回アフターコロナに向けた地域交通の「リ・デザイン」有識者検討会の委員発言要旨によると、みちのりHDは次の3点を指摘していた。
ひとつめは、現行の補助制度は赤字補填を目的としており、事業者がサービス水準の向上や運行効率化、利用促進に取り組むインセンティブが働かない点。ふたつめは、補助が単年度で行われるため、事業者が営業所を開設したり土地を取得したり、バスを購入したりする長期投資の担保にならず、設備投資が進まない点。三つめは、系統単位の補助であるため、地域全体を面的ネットワークとして捉える考え方がされない点である。
要約すれば、国や自治体による補助金は赤字の補填ではなく、バス事業者を通じた地域への投資であるべきだという考えである。
みちのりHDの本社は東京にあるが、グループ入りしたバス会社や鉄道会社はこれまでどおり各地域に本社を置いている。各社が再生し、売上や利益を伸ばせば、当該自治体の税収も増える。また、バス事業や鉄道事業という公益性の高い事業が充実すれば、住民サービスの向上にもつながる。
逆説的にいえば、地元自治体にとって、みちのりHD傘下のバス会社や鉄道会社は、経常利益の有無にかかわらず、補助金の「投資対象」になり得る。
みちのりHDは民間のハンズオン型コンサルティング会社である。縦串によるスピード経営や横串によるスケールメリットの追求によって、民間企業単体でバス会社や鉄道会社を再生する手腕は十分に持っている。
さらに、国や地方自治体を巻き込み、補助金を「バス事業者を介した地域への投資」に振り向けさせているとすれば、みちのりHDは従来型の第三セクターや公設民営とは異なる、新しいビジネスモデルをバス業界や鉄道業界に導入したといえる。
今回の福島交通と会津乗合自動車の合併は、縦串によるスピード経営と横串によるスケールメリットの追求の典型例である。合併後の補助金の扱いも注目されるところだ。