軽の「絶対王者」陥落! ダイハツ1年10か月ぶり首位返り咲き、ムーヴ好調の裏でN-BOX失速したワケ
筆者の意見

新型ムーヴが首位に躍進した背景には、スライドドアの採用と価格設計に基づく明確な戦略がある。ムーヴはスズキ・ワゴンRやホンダ・N-WGNと競合するハイトワゴンだ。新型ムーヴはスライドドアを採用した一方で、ムーヴ、ムーヴキャンバス、タントの各車種は市場での食い合いを避けるポジション設定がなされている。ダイハツは軽市場で最適なポートフォリオを構築し、共通価値であるスライドドアを軸に、車高やデザイン、価格帯でユーザーが選べるラインナップを確立した。
価格設定も販売に寄与した。新型ムーヴの中級グレードXは149万円からで、N-BOXの最廉価グレードより約2割安い。価格感度の高いユーザーに受け入れられ、販売を押し上げた。
加えて、タントの「リミテッドシリーズ」が販売好調を支えた。2025年7月に発売されたタント・リミテッドシリーズは、両側パワースライドドアや運転支援機能を装備しつつ、価格を抑えた特別仕様車である。オプションを削らず価格を抑えるパッケージングの巧妙さが現場で評価された。新型ムーヴをきっかけに来店が増え、他車種にも好影響を与えた結果、2025年10月にはタントが3位に浮上し、ダイハツブランド全体をけん引した。
一方、N-BOXが失速した背景には、高価格化と都市部販売網の相対的劣化がある。近年のモデルチェンジで装備が充実する一方、価格も上昇し、最廉価モデルでも170万円台となった。軽としての気軽さや買いやすさが薄れ、消費者との距離が広がったことが販売減の要因と考えられる。
さらに、都市部でのダイハツの販売攻勢も影響した。関東から関西、中部、九州にかけて、都市部での販売ではダイハツがホンダを上回る傾向があり、N-BOXの減速に拍車をかけたとみられる。
ダイハツによるムーヴの逆転は、一過性とは限らない。軽市場はスーパーハイト一極集中型から、ハイトワゴンと価格バランス重視型への転換の兆しを見せている。新型ムーヴは、スライドドアによる利便性と価格優位性によって、「絶対王者」を倒す価値を見直せることを示した。