「EVだけでは勝てない理由」とは? 日本車は再び世界を席巻できる? 持続可能なモビリティ社会を考える【連載】Make Japanese Cars Great Again(6)

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日本車は国内外でHVを中心に400万台超を販売し確固たる存在感を示す一方、EVやFCV、液体燃料など多様な技術選択が国家の総合力と連携によって求められる転換期を迎えている。

液体燃料カーボンニュートラルの将来性

 液体燃料のカーボンニュートラル化は、世界的に注目される次世代の取り組みだ。現時点で注目される燃料には、合成燃料(e-fuel)とバイオ燃料がある。合成燃料は、大気中の二酸化炭素と再生可能エネルギー由来の水素を化学反応で合成することで製造され、理論上は完全なカーボンニュートラルが可能だ。

 ポルシェがチリの合成燃料製造プロジェクトに出資したことでも話題となった。資源エネルギー庁によれば、2030~2034年に商用化を進め、2035年以降に生産量を拡大するロードマップが示されているものの、実現性には不確実性が残る。

 一方、バイオ燃料はトウモロコシなどに含まれる糖を発酵させて得られるバイオエタノールをガソリンに混合する方法で活用される。混合割合に応じてE5、E10、E20などと呼ばれる。日本では法令上E10までが基準とされ、それ以上は安全性や排ガスへの影響の検討が必要だ。

 さらに、現状日本のバイオエタノール自給率はほぼゼロであり、安定的かつ安価に輸入するのか、国内生産を増やすのか、政策的方向性はまだ定まっていない。燃料の品質管理や供給体制、対応車両の整備など、解決すべき課題も多い。

 世界の状況をみると、ブラジルやアルゼンチン、インドなど、自給率が100%を超える国も存在する。こうした国では、EVよりもバイオ燃料車の方が短期的には普及ポテンシャルが高い。日本市場でも液体燃料のカーボンニュートラルは将来の選択肢として重要であり、EVやHVと併せて、多様な技術の組み合わせで持続可能なモビリティ社会を実現する視点が求められる。

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