「EVだけでは勝てない理由」とは? 日本車は再び世界を席巻できる? 持続可能なモビリティ社会を考える【連載】Make Japanese Cars Great Again(6)
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日本車は国内外でHVを中心に400万台超を販売し確固たる存在感を示す一方、EVやFCV、液体燃料など多様な技術選択が国家の総合力と連携によって求められる転換期を迎えている。
FCVと水素供給の課題

EVやHVに比べると目立たない存在だが、FCVも確実に市場に投入されている。ただし、2024年の国内乗用車販売実績はわずか663台にとどまり、技術としてはまだ発展途上だ。
FCVはモーターで走行する点ではEVと同じだが、電力源が異なる。EVがバッテリーに蓄えた電気で走るのに対し、FCVは水素と空気中の酸素の化学反応で発電する。トヨタのFCVは、水素の充填にかかる時間が約3分で、1回の充填で800km以上走行できるなど、性能面ではEVに優る部分もある。しかし、高圧水素タンクの容量や水素ステーションの少なさが普及のネックとなっている。
さらに、FCVの拡大には水素の安定供給が不可欠だ。再生可能エネルギー由来のグリーン水素の生産体制を整えつつ、安定的に調達する必要がある。この課題は、自動車メーカーだけでなく、国のエネルギー政策とも密接に関連している。現在、日本は水素・燃料電池戦略ロードマップに基づき、産官学で取り組みを進めている段階であり、FCVの広範な普及にはまだ時間がかかると考えられる。
こうした背景を踏まえると、FCVは現時点では主に大型車両や商用用途に適した技術である。乗用車市場での拡大は限定的だが、長期的には水素インフラの整備とグリーン水素の安定供給が進むことで、エコカー戦略の重要な選択肢として存在感を増すことが期待される。