「自然災害一発で止まる」トヨタ・JLR・フォード工場が直面した“集中型生産”の危うさとは

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2025年9月、ブラジル台風や欧州サイバー攻撃、米工場火災で自動車生産が世界規模で停止。トヨタやJLR、フォードは段階的復旧を進めるが、集中型サプライチェーンの脆弱性と柔軟な生産体制の重要性が浮き彫りとなった。

サプライチェーンの脆弱性

トヨタ・カローラクロス(画像:ブラジルトヨタ)
トヨタ・カローラクロス(画像:ブラジルトヨタ)

 自動車産業は規模の経済と生産効率化を最優先課題として発展してきた。同時に、集中化されたサプライチェーンを築き、グローバル規模で部品調達の最適化を推進してきた。

 しかし、自然災害や地政学的リスク、港湾や道路の物流停滞が常態化するなかで、この構造自体が新たなリスク要因となりつつある。集中化された調達網は、特定地域や拠点に障害が起きると全体の生産に波及する脆弱性を抱えており、企業の管理部門や現場では常に予備対応策の検討が求められる。

 転換点となったのはコロナ禍である。世界的な半導体不足により、車両生産は大幅に遅延し、完成車工場だけでなく部品サプライヤーにも混乱が波及した。それまで競争力の源泉だった効率化は、需要変動や供給途絶に対して裏目に出ることが明らかとなった。企業は、効率だけではなく柔軟性を確保するための冗長性やバックアップ策を検討せざるを得なかった。

 さらに各国の経済安全保障政策は強化され、輸出規制や関税、サプライチェーン保護策が増加している。最適地生産より

「安全地生産」

への移行が急務となり、企業は立地選定や調達戦略を見直す必要に迫られている。効率と安定性のトレードオフをいかに設計するかが、今後の企業競争力の核心となる。新たな競争軸では、柔軟性のある生産体制を迅速に構築できるかが勝敗を分ける要素となっている。

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