競争を捨てて「地域交通」は守れるのか? 岡山市5社が挑む“共同経営”の挑戦
地方都市の路線バスや路面電車で複数事業者が協議し運賃や路線を統一する「共同経営」が拡大している。岡山市や熊本地域では認可制の下、均一運賃やダイヤ調整により利用者利便性が向上し、2029年度には約1億5000万円の収支改善も見込まれる。地域独占特例法は、既存事業者の独占ではなく公共交通維持を支える新たな制度的仕組みとなる。
地方バス協議の法的意義
2020年の通常国会で成立した「地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律」は長いため、ここでは「地域独占特例法」と呼ぶ。
この法律は、地方の交通事業者や地方銀行が利益を確保するために複数社間で協定を結んでも、独占禁止法の適用外になることを認めるものだ。
かつて日本の映画界には「五社協定」が存在した。1950年代に日活の台頭を抑えるため、東宝・新東宝・大映・松竹・東映が、互いの専属俳優を貸し出さず、解雇した俳優も他社が採用しない取り決めを結んだ。これは明確なカルテルであり、公正取引委員会も問題視していた。カルテルの存在は業界全体の活力を奪い、人材の流動性や自由な発想に基づく作品作りを阻害する。
一方で、少子高齢化が進む地方都市のある市では、バス会社4社が燃料高騰を背景に運賃の一律調整や競合しない路線設定を協議した。4社が競合すれば共倒れの恐れがあるためだ。これは既存事業者の利益独占を狙った行為ではなく、
「地域交通維持のための合理的な調整」
である。地域独占特例法以前は、こうした合議も独占禁止法に抵触する可能性があった。