トヨタは国内投資、テスラは技術拡大――戦略再編が進む自動車業界、地殻変動のカギは何か?
中国OEM海外攻勢

2025年、自動車業界は製造拠点戦略の大転換期に入った。中国OEMは欧州や東南アジアへの海外展開を加速し、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は生産体制を大規模に再編した。
一方、日本ではトヨタが国内投資を継続し、米テスラは技術革新型の拡大路線を推進している。
「どこで何を作るか」
の判断が企業の命運を左右する時代である。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、中国OEMの海外製造能力は2026年までに430万台を超える見通しだ。現在は主にボルボ経由で欧州に16万台の製造能力を保有しているが、2年で大幅な拡大を計画している。対象はEV専用工場と電気自動車(EV)/内燃機関(ICE)車併設工場を含む、中国OEM全体の海外製造能力である。地域配分を見ると、欧州が約半分、東南アジアが大部分を占める構造だ。
欧州展開の目的は
・関税回避
・現地化対応
である。欧州連合(EU)域内で生産すれば輸入関税を避けられるうえ、現地雇用を生むことで政治的受容性も高まる。東南アジア展開の狙いは異なる。
・技術移転を通じた市場参入
・低コスト生産拠点の確保
・ASEAN域内の自由貿易協定を活用した第三国向け輸出
が可能になる。既存の自動車産業集積があり、サプライチェーン構築のハードルも低い。
この海外攻勢は既存メーカーにふたつの圧力をかける。ひとつは「価格競争の激化」である。現地生産により物流コストを削減した中国OEMは、より攻撃的な価格設定が可能になる。もうひとつは「技術革新圧力」である。競争激化により、各社は差別化要素として技術開発を加速せざるを得ない。
従来の自動車産業グローバル化は「輸出モデル」が中心だった。しかし中国OEMの戦略は
「戦略的現地生産」
への質的転換を示す。市場ごとの特性に応じて生産拠点を配置し、地域最適化を図る新段階に入ったといえる。