ヘリ前方の「ひも」の正体とは――100年以上現役、航空安全と運航効率を支えるヨーストリングの知られざる効果
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航空機の安全を支えるのは、時に100年以上前に発明された「ひも」だ。ライト兄弟が1903年に開発したヨーストリングは、低コスト・高耐久で微小な横滑りも即座に検知。高度計器と併用し、現代のヘリ運航にも不可欠な飛行補助装置である。
横滑り防ぐ低コスト計器

ヨーストリングはキャノピーや機首上部など、乱流の少ない部分に取り付けられる。飛行中、相対気流がひもを後方に押し流し、空気の流れに沿って動く。航空機が傾けば、ひもはそのずれを即座に示す。
ヘリコプターが飛行すると機体に空気が当たる。フロントガラスのヨーストリングが垂直であれば直進中だ。左右に傾けば、相対風を受けて横滑りしていることを意味する。斜めに向くヨーストリングの反対側に、機体が向いていると考えられる。右にひもがなびけば機体は左、左にひもがなびけば機体は右を向いている。
旋回中もヨーストリングは横滑りを検出し、修正の目安となる。意図に反して機体が傾いた場合は、ラダーペダルを踏んで安定させる。左右のペダルを操作すると、テールローターの推力が調整され、機体の向きを制御できる。左ペダルを踏めば左に、右ペダルを踏めば右に機体が向く仕組みだ。
テールローターは機体を安定させるだけでなく、ヨー、つまり機首の向きを水平方向に制御する役割も持つ。船のかじのような機能である。