「経営陣が無能」「技術の日産は死んだ」 ネット上に“アンチ日産”が大量発生する理由――愛と挫折の40年史が映す、ブランド不信の深層とは
長期スキャンダルの影響
自動車メーカーの新車販売台数を見ると、トヨタは3割前後で安定している。他の主要メーカーであるスズキ・ダイハツ・日産・ホンダは10%台前半に落ち着く。
ただし、1970年代後半から1980年代前半にかけてテレビドラマ
「大都会」
「西部警察」
に日産の魅力的な車両が多数登場し、この時代に青春を過ごした世代には“日産党”が多く存在した。現在、その世代はリタイヤしたか、まもなくリタイヤする年齢層である。ANOはこうした世代を中心に、日産関連記事に頻繁に書き込みを行い、かつての栄光と現在の課題を比較して「裏切られた」という心理を伴った批判を展開する傾向がある。
2024年3月、日産は下請法違反の勧告を受けた。公正取引委員会は、日産が下請け企業に対して支払い金額を不当に減額したと指摘している。2018年には、元会長カルロス・ゴーン氏と元取締役グレッグ・ケリー氏による金融商品取引法違反事件が記憶に新しい。さらに同年には燃費・排ガスデータの改ざんも発覚した。
ANOはこれらの過去のスキャンダルを参照し、かつて抱いたブランドへの期待が裏切られたという感情を土台にオンライン上で批判の文脈を形成する。さらに、2024年11月の日産による世界全体での9000人の人員削減や、利益の大幅減少、北米市場でのハイブリッド車投入の遅れ、中国勢とのEV競争激化などの情報も、ANOの批判行動を誘発する材料となる。一部ディーラーでの車検後の整備不良やエンジントラブルも、ANOはSNSやコメント欄で積極的に取り上げ、批判の火種にしている。
日産にはトラブルが後を絶たない。ゴーン体制下のガバナンス問題など、組織的スキャンダルの経験も多い。他社と比べても「長期・大規模」の印象が強く、消費者と社会に悪いイメージが固定化してしまった。ANOはこれを背景に、過去から現在にわたる一連の問題を指摘し続けることで、個人の「裏切られた期待」が集合的批判文化として表現されるパターンを形成している。社会的信頼の低下は、ブランドへの集合的な不信感として蓄積され、ANOの批判行動の下地となっていると考えられる。