「黒字リストラ」は自動車業界にも波及する? パナソニックHD1万人削減、世代交代・人材戦略の分岐点とは

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日本の製造業で黒字決算下にも関わらず人員削減が相次ぐ。三菱電機やパナソニックは1万人規模の早期退職を実施し、高齢層の厚み是正に動く。自動車産業もCASE対応でスキル需要が急変するなか、次世代への人材移行が競争力を左右する分水嶺となる。

黒字リストラの転機活用

トヨタ自動車の本社(画像:AFP=時事)
トヨタ自動車の本社(画像:AFP=時事)

 参考となる成功事例は複数ある。ドイツでは専門職を育成する「専門職業訓練(デュアルシステム)」が広く定着している。BMWはこの制度に基づき、EVやデジタル分野でベテランと若手を組ませた「デュアル教育」を実施し、双方が学び合う機会を提供している。

 トヨタは再雇用人材を部品調達や品質保証など専門性の高い領域に活用し、個々のスキルを長く生かす体制を整えている。欧米企業では黒字リストラが一般化しつつあるが、日本企業は人材循環の仕組みを工夫することで、独自の道を切り拓く余地が残されている。

 自動車業界でも黒字リストラは波及し得る。それをただの縮小均衡にするか、次世代への移行に活かすかは企業の設計次第である。人員削減だけでなく、技術伝承と新分野での人材育成を両立させる取り組みが不可欠だ。

 黒字リストラを契機に人材循環や育成を進めれば、競争力強化につなげられる可能性もある。日本型の人材活用モデルを再構築できるかが、今後の自動車産業の競争力を左右する分水嶺となるだろう。

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