「黒字リストラ」は自動車業界にも波及する? パナソニックHD1万人削減、世代交代・人材戦略の分岐点とは
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日本の製造業で黒字決算下にも関わらず人員削減が相次ぐ。三菱電機やパナソニックは1万人規模の早期退職を実施し、高齢層の厚み是正に動く。自動車産業もCASE対応でスキル需要が急変するなか、次世代への人材移行が競争力を左右する分水嶺となる。
高齢化と人員最適化

自動車産業での人員削減の代表例として、日産はゴーン体制下の1999(平成11)年、リバイバルプランで2万1000人を削減した。ホンダも2019年に英国工場を閉鎖し、3500人の人員削減を実施している。近年では日産の経営再建計画「Re:Nissan」で、2027年度までに2万人削減を計画し、マツダも2025年4月に早期退職者500人を募集した。
一方、トヨタ自動車は大量削減を避け、部門別の「人員最適化」を進めている。ハイブリッド関連から
・EV
・ソフトウェア領域
への再配置を優先する方針だ。しかし、再配置が進まなければ、トヨタであっても黒字リストラに踏み切る可能性は否定できない。
国内完成車メーカーは企業城下町を抱えており、大規模リストラは地域経済に影響する。そのため慎重な対応が目立つが、高齢社員の比率が高い構造的リスクを抱えており、黒字リストラが波及する可能性は十分にある。
近年の黒字リストラの問題点として、年齢一律で対象を決めるリスクがある。有能なベテランが大量に退職すれば、企業の存続に大きなダメージとなる。加えて、日本型雇用の慣行が「年齢切り」を誘発している構造は否定できない。
黒字リストラはコスト削減にとどまる危険もある。
・技術伝承
・人材循環
が断絶すれば、世代交代が進んでも中長期的な競争力向上につながらない可能性がある。特にエンジン分野に蓄積された知見は、将来的に新たなイノベーションを生む種となり得る。こうした財産をリストラで失うことは、産業界全体にとって損失になりかねない。